必死に睨みながらそう言い放つと、彼は慌てたように両手を振った。


「え、あっ、違う!すいません驚かせて。マリナさんからは自分が不在のときにはこれで入っていいからと鍵を渡されたんだけど、まさか同居人の存在は聞かされていなくて」

「…はぁ?」



ちんぷんかんぷん。


"自分が不在のときにはこれで入っていいから"って何?

"同居人の存在は聞かされていなくて"って?



彼はふぅと肩で息をして、「すいません。いったん落ち着きますね」と頭を下げた。

そして一息してから顔を上げた。

真っ直ぐな目だった。



「…俺は、三木蒼太(みき・そうた)といいます。すぐ近くのW大学に通っている4回生、22歳です」

ゆっくりとした柔らかい、聞き心地のいい声。