そのなにかがいつもわからなくて、苦労しているんだけど。
「…よっこらしょ」
おばさんみたいな一人言とともに、ソファーから身を起こした。
喉渇いた。りんごジュースが飲みたい。
さすがにそれを一杯飲んだら、着替えましょうか。
そう決めて立ち上がり、キッチンに向かった、
とき。
――ピーンポーン
平日のこの時間には珍しい、来訪者を告げる音が響いた。
私は目を丸くした。
アユミちゃんは来るとしても土日だし、マリナさんなら絶対に鍵を持っている。(万一忘れたとしても暗証番号で4階までは上がってこれるから、あとはドアを叩いて"ユッキー開けてー!"と言うはずだ)
このマンションの仕組みは、いわゆる最近増えているものと同じ。
私たちが住んでいるのは4階だけど、1階―ロビーにはマンション全体の出入口となる大きなドアがあり、オートロックになっている。
来訪者は、取り付けられた専用インターホンで来室番号を入力して、相手がOKのボタンを押せばそのドアが開かれる。
住人は専用の鍵をインターホンにある鍵穴に差せばドアを開けられるし、鍵を忘れた場合は暗証番号を入力すれば開けられる。
あとは、各部屋にもう一度インターホンがあるけれど、それは普通の家と同じ。