この季節が来ると、 俺は一度だけ、そっと目を閉じます。 心の中に眠る秘密基地の蓋を開けると、 そこには22歳の俺がいます。 ――川のきらめきと、あの日見た空の色。 指先に籠る温かさ。 重なった唇の熱。 月日が徐々にぼかしていく彼女の姿が、どんなに薄くなってしまっても。 それだけは、ずっとずっと消えないのです。