「ユッキー、ちょっと来週の出張変わってくれる?」
「あ、いいよ。来週ならいけるし」
「ありがとー!ランチ奢るよ。行こ行こ」
…私はいつの間にか、あの頃の蒼ちゃんの年齢を追い越してしまいました。
もっと、大人っぽくなれるかと思ったけれど。
相変わらず悩んでばかりで、苦労することもたくさんです。
それでも、肩の力を抜くことを覚えて、前より心が自由になったからか、友達も増えました。
同じ会社に、恋人もいます。
――私が大きく変わったのは、やっぱりあの五日間にある気がします。
大人とは、徐々になっていくものだと思っていたけれど。
あるとき突然やってきて、急になるものだったのです。
…少なくとも、私にとっては。
だけど、まだ記憶に残る彼をほんのりと思い出すと、
あのときの彼はまだ、一人の男の子だったように思います。