でも唯一、彼が本当に私の傍にいたんだと思えることがあります。



「玉響に
昨日の夕べ見しものを
今日の朝に恋ふべきものか」





…私は、この歌を知ったとき。
あのときは、先輩のことを思い浮かべていました。



だけど今は。


彼のことを。
――蒼ちゃんのことを。

想って、仕方ないのです。



一瞬会っただけなのに、想い続けているのは、
蒼ちゃんのことだったのです。



…それは恋だったのか。
そんなことは、私にとってどうでもいいことでした。

もう叶わない。
もう、終わってしまったことだから。