――風が吹くたびに、「いい風だなぁ」と思って。

葉が青々としてきたなと思う、ちょうどこれぐらいの季節になると。


私は思い出すことがあります。






…もう十年近く前でしょうか。

ちょうどこれぐらいの季節の、たった数日間のこと。




それはあまりに奇妙な体験でした。

…自分の母親の恋人と、数日とはいえ同居していたのだから。



ただ、一番不思議なのは、
あの頃の私はそれに対して何も嫌な感情を持っていなかったことです。


きっとそう思うには、彼は、あまりに綺麗だったのでしょう。