…よかった。
それが聞けただけで、充分だった。
私は肩の力を抜いた。
香奈は不思議そうな顔をして、唇を尖らせている。
「ちょっとユッキー。何よ今の」
「なんでもない」
「誰よ、その三木蒼太さんって」
…苗字と名前を一気に覚えたとは。
香奈の記憶力に驚き呆れながら、私は「なんでもないの」と畳みかけた。
「ちょっと昔の知り合いだよ」
「えー、なにそれ…
あ、美味しい!」
香奈はぱっと顔を上げて、感動に目を潤ませた。
チーズケーキのあまりの美味しさに、三木蒼太のことは一気にどうでもよくなったらしい。
私もケーキを口に入れた。
…なんだか、前よりも美味しかった。
「美味しいね」
共有できる相手がいるからか、
今まで食べたチーズケーキの中で一番おいしく感じた。