私と香奈の前にケーキが一つずつ並べられて、お姉さんが伝票を確認する。
「以上でよろしいでしょうか?」
「はーい」
笑顔で答える香奈に続いて、思わず「あの…」と声を出してしまった。
お姉さんが「はい?」と目を丸くして私を見つめる。
目がくりくりしていて可愛いお姉さんだった。
注文を間違えてしまったのかと戸惑ったような表情をしている。
「三木さんって方…いらっしゃいますか」
突然へんな質問をし出した私に、香奈が「ユッキー?」と首を捻った。
お姉さんは少し考えてから、
「ああ。蒼太君ね」
と微笑む。
「彼は、ちょうど先月に辞めたんです。お知り合いですか?」
「…ええ、まぁ」
「なんでも、就職先での研修などが忙しいみたいで」
お姉さんはそう笑って教えてくれると、伝票を置いて「ごゆっくりどうぞ」と去っていった。