私は何故か立ち止まったまま、見えなくなるまで、茜色に染まる二つの背中を見送っていた。



――何が間違ってるのか、わからない。
自分がどういう人間なのかも。

気を付けるよ、と言ったけど
何を気を付ければいいのかも実はわかってないよ。


家族の話をしなければいい?
聞かれたとしても濁すか、嘘をつけばいい?
違う話がたくさんできるぐらい、ネタがあればいいのにな。


…そうしたら、私もあの二人の中に入れる?






なんて不毛なことを考えていたら、バッグが微かに振動した。
慌ててファスナーを開けて、携帯電話を取り出す。


…なにこれ、見覚えのない番号。


「いっか。出なくても」

そう呟いて、着信を切断した。



…帰ろ。