あのときと同じように、思わずきょろきょろしてしまう。
香奈はきょとんとした顔で「どうしたの?」と聞いてきた。

「…ううん、なんでも。


…あ」


有紗がトレイにコーヒーを載せて運んでいくのが見えた。
目が合うと、小さく笑みを返してくれた。
私も手を振り返す。


「あ、佐藤さんが働いてるんだ。だから探してたんだね」


香奈は一気に合点がいったような表情になったから、私も「うん」と笑った。


内装は変わらず清潔でお洒落で、レトロな雰囲気。
ただ一つ違うのは、
店内に男の人はまったくいなかった。




「こちらにどうぞ」


案内された席は、偶然にも前と同じ席だった。
やったぁ窓際、と香奈は嬉しそう。

この席に縁でもあるのかな。
なんて少し複雑な気分で腰を下ろす。



まだ、ほんの少し期待していた。
――でも。



「ご注文をお伺いします」


笑顔でやってきたのは、さっきの人とは違う、かわいらしいお姉さんだった。


やっぱりね。
そうだよね。

なんて思いながら、チーズケーキとコーヒーのセットを二つ注文する。