ふと、一昨日の帰り道を思い出す。

雨の中蒼ちゃんを迎えに行って、一緒に帰った夜。


雨がやんだあとに雲が去って、月が見えたことを思い出した。
胸がぎゅうっと苦しくなる。


私はマリナさんを振り向いた。

マリナさんは相変わらずで、荷物を床に放り投げ出したまま、キャミソールに短パンという楽な格好をしている。私と同じ。

長い巻き髪を、私がさっきまで借りていたシュシュで後ろにまとめあげていた。
そして温め直したチャーハンを食べている。



「…」

私は無言で、向かい側の椅子に座った。
食卓を挟んで向かい合う。


「…ん?」


マリナさんがスプーンをくわえたまま、「なーに?」といった目を上げてきた。



私はその端正な顔立ちをじっと見つめてしまう。



――マリナさん。
私の、お母さん。

生まれてから私はこの人に何度も憧れたし、何度も軽蔑した。




「…マリナさんにとっての、恋愛って何?」

私は頬杖をついて、なんでもないことのように聞いてみた。