――その夜。
マリナさんはひょっこりと帰ってきた。

いつもなら22時を過ぎると眠くなるのに、何故かいつまでも眠くならなくて。
ソファーにぼんやりと座っていると、ドアが開いた。




「ただいまー。
…あら、ユッキー。起きてたの」

「…おかえり」


マリナさんは少し疲れた顔をしていて、スーツやら着替えが入った紙袋を二つほど持っていた。

きっと、仕事が忙しいのは本当だったんだろう。
メイクもいつもほど完璧ではなかった。


「…何かあるかなぁ。ちょっとお腹空いた」

「チャーハンならあるよ」


――今朝、蒼ちゃんのために作ったチャーハンが少しだけ余っていた。
それを取り出してレンジに入れると、マリナさんの声が弾む。

「ありがとー!助かる」


なんとなく暗がりだった部屋に、もう一個スイッチを押して電気をつける。

窓のカーテンを閉めるときに、外を見た。
綺麗な月が浮かんでいた。