「絶対あるでしょ~だからあんな話して、気を引いちゃって」
「そういうわけじゃ。…自己紹介しようってなって、家族の話になっちゃったから自然と出ただけで」
友達も彼氏もいない私の話のネタなんて、そう多くない。
バイトもしてないし。
家族について聞かれたら、正直に答えるしかない。
私は自分の家庭を恥じたことは一度もないし。
それなのに、勝手に興味を持って勝手に気を引かれて、頼んでもないのに同情してくるのはみんなのほう。
必要のない同情ほど、人を不快にさせるものはない。
「ユッキーはねー、あんまり、そういう話しないほうがいいと思うんだよね。前から思ってたけど」
「え?」
「母子家庭だとか、母親が若いとか。同情されるの嫌いっていうけど、同情を誘ってるよーにしか見えないよ?」
私は美奈子をじっと見た。
ついでに有紗も見たけど、彼女とは目が合わなかった。
…有紗とはいつも、あんまり目が合わない。美奈子を挟んでるからか、三人で並んではいるけど私と有紗が会話することはほとんどない。
――なんだろこれ。
あ、だめだ。なんだかわからなくなっちゃった。