蒼ちゃんが、そう言った。
私は頷いた。
――そう。その通りだろう、きっと。
ふらふら付いていったのが悪い。
だめな相手を好きになったから悪い。
"もっといい人いるよ"
きっとそんな慰めさえ、胸に痛い。
端から見たら私は愚かだし、先輩はサイテー男だ。
蒼ちゃんは愚かで、マリナさんはサイテー女。
…でも、サイテーと思えないから、一番辛い。
嫌いになって別れた訳じゃない。
嫌いになって終わった訳じゃない。
だってそうでしょう?
一度好きになってしまった人を、そう簡単に嫌いにはなれない。
蒼ちゃんが、私の頭をぽんぽんと優しく叩いた。
「俺が覚えていてあげる。ユッキーが今日すごく傷ついたこと、覚えといてあげるから」
――蒼ちゃんは、切なくなるほどダメな男だ。
そして、切なくなるほど優しい。