私があっさりそう言うと、
蒼ちゃんは困ったように頭を掻いた。
「全力で海に走っていく気だったよ」
「すごく遠いじゃん。バカなの?」
「…まぁ、そうだけど」
私は微笑んで、蒼ちゃんの腕を軽く叩いた。
急かすように何度も叩く。
「だから、河原行こうよ」
「え?川?」
「それなら近くでしょ。昔、よく遊んだの」
そう。
小さい頃、近所の子達とよく遊んだ。
家からは少し遠かったけど、気にせずに走っていった。
――あの頃が、私は一番楽しかった。
蒼ちゃんが再び運転を始める。
向きを変えて、バイクは河原に向かって走り出した。
「風が気持ちいいね」
「こら、手を離すな」