鼻がべしっと蒼ちゃんの背中にぶつかって痛い。


「しょーがないだろ。俺授業さぼってるんだし、誰に目撃されるかわかんないのにのんびり走るわけには」

「さぼって大丈夫だったの?単位」

「あとでいくらでも巻き返すよ」


そんな会話をしながら、どんどんと駅の中心から離れていく。

「どこ行くの?」

「どこ行きたい?」

「んー、川?」


適当にそう答えたら、急ブレーキがかかった。
再び私の鼻が目の前の背中にぶつかった。

そろそろぺちゃ鼻になりそうだ。

「ちょっと…」

「あれ、海じゃないの?」


エンジンをかけたままバイクを止めて、蒼ちゃんが驚いた顔で私を振り向く。


一瞬首を傾げるけど、ちょっとしてから「ああ」と気づいた。

…そっか。
昨日、そんな話をしてたから。


私は海が見たいんだと、思われてたみたい。



「いや、もう海はいいの」