…そうか。
こんなにがっしりと抱きつかなきゃいけないのか。


蒼ちゃんの体温を感じると、ドキドキするというよりは安心する。

柔軟剤のいい匂いがする背中に頬を少しくっつけた。


「じゃ、いきまーす」

「はい。お願いしまーす」


掛け声と共に、エンジンが起動する。
バイクが軽やかに走り出した。


「怖くない?」

「んー、なんか慣れてきたかも」

「早いな」



いつも歩いている道が、違う速度で通るだけで違った景色に見える。

角を曲がって、また角を曲がって。


駅とも学校とも違う方向に走り出す。
どんどん景色が変わっていく。



「…あ、w大」


大学の近くに差し掛かったときだけ。

――体が吹っ飛ぶんじゃないかと思うようなスピードが出た。



息もできない。



「ちょっと、急に飛ばさないでよ」