「…待たせてごめんね」


先輩は固い表情に、無理やりな笑みを浮かべて言った。
なんだか、背まで小さくなったように見える。

たった一晩で。
たったあれだけのことで。

悲しいぐらい見え方が違ってしまって、思わず首を振りたくなった。




――…それなのに、まだ期待している。
ほんのわずかな、ギリギリのところで繋いでいる。

一縷の望みを。




だけど、蒼ちゃんのあの悲しい目を思い出せば、これ以上バカになる気はなかった。



「…先輩」

「…」

「私たちは、なんなんですか?」






――昨日の帰り道。

無言で、マンションの近くまで送ってもらった。
先輩が黙っているのがなんだか怖くて。

私はできるだけ可愛く、本当に女の子らしく聞いてみた。
私の精一杯だった。



「わたしたち、付き合ってるのかな」
って。

…でも、先輩の答えは、



「…わからない」

だった。