…ついてなかった。

そう、本当に蒼ちゃんはついてなかったのだ。

唇についたクリームソースをちらっと舐めとったとき、蒼ちゃんと目が合った。
何故かファーストキスを思い出してしまった。



「本当そうですよね。なんか、もう今となっては笑い話で」

「ちょっとバカだったのね。でもそこはW大生なんだし、あなたみたいな人だったらマリナよりいい人いくらでもいるよ」


頭を掻きながら、蒼ちゃんは苦笑いする。
…なんだか、無理してるように見えた。


「そうですよね。また、頑張ります」

「ところでユッキー、なんで遅かったの?」


そこで急にマリナさんは私に話を振った。

内心、カルボナーラをひっくりかえしそうなぐらい、うろたえたけれど。


そこは全力で平静を装って、無表情を作った。



「ちょっとね」

「ユッキー、彼氏できたもんな」


他人がせっかく平静を保とうとしてるのに、蒼ちゃんが余計なことを言う。

アユミちゃんが、いわゆる女子高生のようなノリで「えー、うっそー!聞いてないんだけど」と高い声を上げた。






「なによそれ。イケメン?」

「うん。かっこいいよ。…な、ユッキー」

「…まぁ、不細工ではないかな」


変に否定するより、この方が自然だ。

私の頭の中はいつになく冷静だった。



「ちょっとバイクでドライブしてたの」