もう、なにがなんだかわからない。
頭の中が混沌としてくる。


…ただ、先輩が切なげに私のことを呼んだあと。



「…ん…っ…?」


――頭をそっと引き寄せられて。
温かい感触が、私の唇を塞いだ。



…一瞬、自分がどういう状態なのかがわからなくなる。

手がちゃぶ台に当たって、カタンという音を立てる。





初めてのキス。

…いや、初めてじゃない。
初めてのキスは、蒼ちゃんだったんだ。



そういえば不思議とあのときは、初めてなのに、そんなに驚かなかった。
まるで受け入れる準備ができてたみたいに。




なのに、今の私はその感触に慣れなくて、とっさに先輩の腕を掴んでしまった。


「せ…せんぱ…いっ」

「…っ…」

先輩は私の頬を手に挟んだ状態のまま、唇をそっと離した。


手も、頬も、唇も、
なにもかもが熱を帯びていて。

熱い。



先輩の切なげな、色気のある目に見つめられて、もうなにも考えられなくなった。
身動きすらできなかった。




「…だめ?」






断る理由を見つけられなくて。
私は拒まなかった。



――どうして、自分がそうなってしまったのかはわからない。