私はお茶で喉を潤して、ひとつ深呼吸してから、そっと目を上げた。


「実は…」

「ん?」

「美奈子と有紗と…喧嘩しちゃったんです。いや、喧嘩というのかな…怒らせて、無視されてしまって」


先輩は「ありゃ」と眉をひそめた。
そしてコップをちゃぶ台に置くと、シャツの袖を腕のあたりまで捲り上げながら言った。

「なんで、怒らせたの?」

「先輩と…」


そこから先は口をつぐんだけど、さすがにその先は言わなくてもわかる。
先輩はすぐに「ああ」と的を得た表情になった。



「…やっぱ、ばれてた?」

「有紗が…あのラメールでバイトしてたみたいで」

「え。そんな偶然あるのか」



やれやれと首を振りながら、先輩は苦笑した。

「ごめん。友情関係にひび入っちゃった?」

「それは…先輩のせいじゃなくて、ただ私が…」




私が、先輩と話したかったから。

私が、美奈子たちの本当の友達なんかじゃなかったから。


もし友達だったらこんなに気を使うこともないし、
きっと応援してくれたりしたんだろう。




「…ごめんなさい。こちらこそ、先輩に気を遣わせてしまって…」

私が頭を下げると、先輩が慌てたような声を上げた。



「えー、なに言ってんのユッキー。そんなの気にするなって」

「でも…」

「本当に、ユッキーは気にしすぎだよ」