「まぁ、鞄は適当にその辺に置いてていいよ」

ちょっとお茶入れてくるね。


そう言って先輩は自分の鞄と脱いだブレザーを絨毯の上に置くと、立ち上がって部屋を出た。

私は先輩の鞄の横に自分の荷物を置いてから、
ふうと一息つく。


先輩の、香水のような匂いがする。


きちんと片づけられた机に、整ったベッド。

突然人が来ても慌てた気配ひとつない、落ち着いたきれいな部屋だ。





――私の部屋なんか、すごいことになってる。
人を呼ぶときには前日には言ってもらわないと困るぐらい。

マリナさんの部屋だってそうだ。
蒼ちゃんは気にせずに寝てたけど。





「お待たせ」


先輩はすぐに、コップを二つ乗せたトレイを持って戻ってきた。


そして小さなちゃぶ台を部屋の真ん中に置いて、私と向き合う。


「麦茶、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」



水玉模様のコップの中に、氷の詰まった麦茶。
一口飲むと、氷がカランと涼しい音を立てた。




「で、どうしたの」


先輩はよいしょと長い足を崩して座ると、コップを手にしたまま私に笑いかけた。


「なんか悩んでたけど」