有紗は、私が今までに見たことがないくらいに堂々としていた。
フェンスにもたれかかって、私に微笑みながら、続ける。
「美奈子はユッキーになんの嫉妬もしてないの。美奈子がユッキーに腹を立ててるのは、美奈子が私の友達だからであって」
「え……つまり…」
「うん。中川先輩を好きなのは、私なの」
有紗はあっさりとそう言って、携帯を取り出した。
美奈子と似たような種類の、スマートフォン。
それを私に見せる。
――画面には、ラメール制服姿の、蒼ちゃんを含めた何人かが写っていた。
その中に有紗もいて、笑顔でピースサインをしていた。
「私、ここでバイトしてるの。高校生OKだし。
美奈子がたまに来てくれるけど、まさかユッキーが来ると思ってなくて、びっくりした」
そこで、すべてが腑に落ちた。
美奈子がここのコーヒーが美味しいと何回か言っていたのも。
やたらと先輩の話を出して、しまいには「女好きだから近づくな」とまで私に言っていたのも。
最近有紗が化粧を始めたのも、美奈子との会話がいっそう盛り上がっているのも。
――先輩を好きだったのは、美奈子じゃなくて、有紗だった。
私と先輩がお茶していたのを、あのお店で、直接有紗が目撃していたんだ。