――美奈子はまるで気づかなかったかのように、視線を逸らした。


…あれ。

今、確かに目が合ったよね?
あれ、合わなかった?


さすがにこんなことは一度もなかったから。
心底うろたえて、どうしたらいいのかわからなくなった。

そのままもう一度歩み寄る気にはなれなくて、自分の席に戻る。



じっと座っているうちにあっという間に時間が経って、担任がやってきた。
つまりホームルームが始まるまで、美奈子に一度も声をかけられなかった。



――今まで、こんなことあったっけ?
…いや、なかった。

それに、さっきは確かに目が合った。


ということは…無視されている?





美奈子たちと、友達じゃない気がする。
そんなことはわかっていたはずなのに。

だから傷つかないと思っていたのに。

予想外に動揺して、予想外に傷ついている自分がいる。