もうなんかやけくそな気分で。
俺は唇の血を拭いながら、くすくすと笑った。


「恋愛にね、純も不純もないんだよ。所詮はこんな風に、性欲のぶつけ合いなんだから」

「…」

「ユッキーはまだ知らないかもしれないけど。
まぁ、俺みたいに遊ばれないように、気を付けなね。あの先輩にも。

いい人そうに見える人ほど、危険なときもあるからさ」




やけになって。
自分がフラれてることなんか、とっくに気づいてたくせに。


――初めてひとつになったあの直後から、本当は気づいてたくせに。
ずっと事実から目を逸らし続けてきて。

それを見事に年下の女の子に指摘されたからって、その子に暴言を吐いている。

自分があまりにみっともないことは、痛いぐらいに、わかっていた。




渇いた笑いをこぼす俺に近づくように、ユッキーは床にしゃがみ込んだ。
そして静かに口を開いた。


「蒼ちゃん」


…また、反撃を食らうだろう。
そう覚悟していたけれど。

ユッキーの発した言葉は、意外なものだった。



「髪、乾かしてあげる」