今の自分が犬以下で、死ぬほど最低なことをしているのはわかった。

だけど、なんともいえない苦しさと嫉妬で、気が狂いそうだった。



「や…っ、ちょっ…蒼ちゃん!!」

「…」

「やめてってば…!ん…」




ユッキーの匂いは、少し、あの人とは違っていた。


ぼんやりと、頭の奥でそんなことを考える。

マリナさんの唇は少し冷たかったけど。
ユッキーの唇は、あたたかかった。



「この…変態っ!!!!」





バシッツ!!!


気を失いそうなほどの激しい衝撃を頬に感じて、体がよろめく。
フローリングの床に崩れこんだ俺の頭を、ユッキーは更に叩いた。

…強い。





「私を…マリナさんの代わりにするんじゃない…っ!」


ユッキーは唇をごしごしと拭いながら、俺を強く睨みつけて言った。


俺は頬に手を当てて、自分の唇を軽く舐める。
少し切れたのか、生暖かい鉄の味がした。


「…そうじゃないんだ、ユッキー」