ぐさっとくる一言だった。


「みんな完璧じゃないのはわかってるけど、少なくとも私は人を巻き込んだりはしてないし」


ユッキーはそう言い切ると、皿とコップを流し台に置いた。
だけど、一番俺の理性を失わせたのは、次の言葉だった。


「恋愛だって道を踏み外してない。マリナさんは、蒼ちゃんを本気で思ってるわけじゃないのに、蒼ちゃんはあの人のためにどれだけの時間を犠牲にした?」




一番痛いところを突かれて。
頭の中がぐるぐるとした。


――本気で思ってるわけじゃないのに。
どれだけの時間を犠牲にした?




なんだか、もう何も考えられなくなって。





俺はがたんと立ち上がると、流し台から戻ってきたユッキーの腕を掴んだ。
もう、何もかもがどうでもよくなってきていた。

マリナさんと初めて会ったとき。
初めて二人でデートしたとき。
初めてのキス、初めてのセックス。

何度も仕事帰りに待ったこと。



いろんなことが頭の中を渦巻いて、吐き気がした。



「ちょっと、蒼ちゃん!?」


細い腕を掴んで、体を白い壁に押し付けて。
その桜色の唇を無理やり塞ぐ。