ふっ、と意識が浮き上がり、俺は重たい瞼を開いた。


満目一杯に広がるのは未だに見慣れない天井。
電気の豆電球がオレンジに発光しているせいか、部屋全体が仄暗いオレンジ色をしている。

ゆっくりと上体を起こすと、額からタオルが滑り落ちた。


湿ったタオルを手に取り、改めて部屋を一望する。


ここは秋本の部屋か。

閉め切られたカーテンは可愛らしい水玉模様に彩られているし、何回か触った木造のクローゼットもそこにある。


自分の身なりを確認。


制服を着ていた筈なのに、いつの間にか秋本の古着が。

色あせた猫のイラストが俺を見上げている。


ポリポリと鼻の頭を掻き、ふと自分の体の異変の事を思い出して、その手を確かめる。

体、透けてない。元通りの色をしている。

明滅する気配が一抹も感じられない。



「俺。どうしたんだっけ」

 

記憶のページを捲る。

確か昼飯を買いに外出したんだよな。

コンビニに足を運んで、それから公園に。
そこで子供用のサッカーボールを見つけて。


瞬きを繰り返し、毛布から抜け出す。

そっとカーテンの向こうを覗き込んでみると、空に星のカーテンが掛かっていた。


お日さんはとっくに就寝しているようで、替わりにお月さんが地上を照らしてくれている。