「ソウ!メール無視したでしょ!」
昼休み。お弁当の袋を手に歩いていると廊下で違うクラスの女の子が彼に話掛けていた。
「寝てた。てか、メールって超ダルいんですけど」
そう返事をしている声がする。
(メールあんまり好きじゃないんだ・・・)
だったら話なんかほとんどした事ないあたしからのメールなんてチェーンメール並みにキモイだろうなぁ。
いつも通り図書室のドアを開けると、図書館司書から学校図書に変わったらしいオバサンが声を掛けてきた。
「柏木さんよね?リクエストされた本やっと入ったわよ」
そう言ってグレーの布表紙の分厚い本を渡された。
「あ、すいません」
受け取って改めて表紙を眺める。
高校生でもわかるっていう医学書。しかも「循環器」専門。
お昼休みは明日香は彼氏とランチだから、他に友達のいないあたしは図書室でいつも1人でお弁当を食べるのが日課。
お弁当を脇に置いて、真新しい本の目次を開く。
目で追うと目的の項目があった。『突然死症候群』。
色々調べているし笹井先生からも耳が腐るほど病状とかは聞いてるけど、それでもどっかに僅かな「延命」とか「完治」とか希望にすがってしまう。
自分の病気のページを開く。
ザッと見ても他と一緒。ため息が出た。
「同じか・・・」
本をパタンと閉じて、今日で読み終わりそうな借りてる小説を開いた。
昭和初期の文通の恋愛小説。結構面白かったな、これ。