「うまーい!!父ちゃん半分こしよう!」店オリジナルの餃子を食べながらツナミが皿を渡してくる。
要は食いきれないって事だ。仕方なく残りをボクが食べる。
「ねぇ、ツナミちゃん」
懐かしい、三上だ。確かまだ独身だったはず。
三上を見上げてツナミの顔が強張る。三上嫌いはルウコの遺伝かも。
「どうしてソウの事『父ちゃん』って呼ぶの?」
ボクの袖にしがみつきながら小声で呟く。
「ママが父ちゃんって言うから・・・」
「だから、ママは『ソウちゃん』だって。何回言えばわかるんだよ」
ビールを飲み干してメニューを見ながら言った。
「ツナミちゃん、新しいママほしくない?」
酔ってるんだろうけど、ボクもツナミも「え?」と聞き返した。
「あたしが新しいママになってあげようか?」
「景子!あんた酔い過ぎ」明日香が注意した。
この言葉がどんなにツナミが傷つくかを知っているからだ。
ルウコが死んでからボクは誰とも付き合ったり、女性と2人で食事すらした事がないけど、たまに店でボクを待っているツナミに客が冗談で同じ事をいう時がある。その夜はツナミは決まって泣く。
ツナミが三上をジーっと見ながら言った。
「ママ、いるからいらない。あたしのママは高柳流湖だもん」
それでも三上は笑顔のままツナミに言う。
「お姉さんがお父さんとお食事するの嫌?」
「ヤダ!!絶対ヤダ!父ちゃん、あたし帰るー!綾乃さんに電話して!」
涙目になりながら言うからボクは綾乃さんに電話をかけた。