あたしの前に『高柳』と書いてあった。


(ウソ・・・あたしの前の席?)


本当は悲鳴を上げたいくらい嬉しかったけど、他の子の手前、普通にした。


「あたし後ろだったよ。明日香は真ん中だね」


「いいなー、ルウコ。窓側の後ろなんて寝ろって言ってるようなもんだし。あ、ルウコの前って高柳なんだ。あたし中川と隣」


普通な感じで言ってるけど、明日香はみんなに見えないようにピースした。


「明日香、中川の隣!?ラッキーすぎるじゃん。柏木さんもソウの後ろって、あ、ラッキーはソウの方だね」


さっきの子が言う。

この子は中川くん狙いなんだ。それに彼を「ソウ」って呼べるんだ・・・。


「別にー。あたし彼氏いるもん。ま、高柳はラッキーじゃん、ルウコ頭いいから課題見せてもらえるしね。ルウコ、高柳に課題見せてあげなよー」


明日香に言われて思わず力んで「うん!」と答えてしまった。



みんなの視線を感じる・・・。



「た、高柳くん、いつも課題忘れてるし・・・いつかは見せてあげるかな?」


何とか誤摩化した。



「オレにも見せてよー」とか「あたしにも!部活組には課題キツい」と言われてみんなに「わかったよ」と笑顔を向けておいた。



移動した席に座ると開いてる窓からの風が気持ちいい。


段々と教室に人が入ってくる中、ドキドキしながら前の席を見つめた。