すっかりテレビに夢中になって笑っているあたしにいつの間にかそばから離れたソウちゃんが言った。


「ルウコー、薬の時間。もう飲んで寝ないと、先生に怒られるぞ」


目の前のローテーブルには夜の分の薬とお水が用意されていた。


「えー、次の番組も見たいよー。薬飲んだら寝ちゃうもん」


「録画しとくから。昼間の暇な時間に見て下さい」


さっさと録画予約にセットしている。


「ソウちゃんはこれから何するの?まだテレビ見るの?」


薬を飲みながら聞いた。


「普段はテレビ見ながら仕事のチェックするけど、今日は一緒に寝るから」


「こんな深夜に仕事するの?」


驚いて聞くと頷いた。


「時間ねーもん。帰って飯食って風呂入ってってしてたら12時とかだし。次の日の予約のお客さんのチェックしとかないとね、これでも忙しいんです」


「へー。何をチェックするの?」


バッグからファイルを出して見せてくれた。

多分、お客さんの会員番号と名前。で後はよくわからない。病院のカルテみたいな感じがする。


「ウチみたいな小さい美容室は大変なんだよ。だから、お客の過去にオーダーした注文を見て、クセ毛とかの髪質を把握しておくの。そしたら明日がスムーズだろ?丁寧で親切で成り立っているんです、ウチの店は」


「高校生の頃のソウちゃんに言ってやりたい言葉だね、課題は前日にするんだよ?って。マジメになったんだね」


ファイルを返しながら言うと「うるせーよ」と言われた。



2人で並んで歯磨きをしてダブルベッドに入る。


あたしに腕枕をして「疲れたー」と欠伸。


これからもあたし達はこうやってずっと一緒に寝るんだなぁと思うと嬉しかった。