「自然」がテーマな感じの小さなブースに着いて、空いている木を粗く削った様なベンチに2人で並んだ。
「誰が出るのかなー」
「シークレットなんで。それはオレにもわかりません」
そんなやり取りをしていると、ぼんやりと明るい照明が一瞬だけパっと明るくなった。
アコギを持ったTシャツのジーンズの人がのんびり歩いてくる。
「ウソ・・・」
「よかったね、ルウコ」
その人はあたしが熱狂的に大好きなバンドのギターボーカル。
昨日のトリで参加していて、あたしは自分の病気なっかたすっかり忘れて大騒ぎしたばっかりだ。
『こんばんはー。ってこんな深夜によくもまぁまぁ集まるもんだな、しかもカップルばっかりだし。死ね!!』
やる気があるんだかないんだか、口が悪いこの人独特なのんびりした話し方。
ちょっとソウちゃんに雰囲気が似てるんだってあたしは密かに思っている。
だからソウちゃんに目が行って、好きになったのかもな・・・。
『って事で、今日はアコギバージョンで色々やるかんね。うーん、カップルばっかりだからラブソングっぽいのに変えた方がいい?』
その言葉にみんな笑っている。
『変えてみようかなー。カバーだけどね。じゃあ、始めまーす』
ゆるーい会話をしてから椅子に座ってギターを鳴らし始める。
「ソウちゃん・・・、あたし最早泣きそうです」
「え?まだ歌ってないじゃん」
笑っているソウちゃんの手をギュっと握ってステージを見入ってしまう。
この人独特の抜けるような澄んだ歌声にあたしはしょっぱなから涙ボロボロ。
ソウちゃんはそんなあたしの頭を撫でて握っていた手を腰に回した。