教室に戻ると担任が受け持つ日本史が始まっていた。
三上さんの頬はちょっと腫れていて濡れタオルで冷やしながらあたしを睨んでいる。
「柏木ー、体育の先生から聞いたけど先に手を出したのはお前だな?」
担任に言われて「そうですけど」と答えた。
それだけで教室がザワつく。
「ま、三上も手を出した訳だから別に問題にはならんけど気をつけろよ」
そう言われたと同時に「不公平なんだけど!」と三上さんが言った。
「三上、何が不公平なんだ?」
「みんな『柏木さん』だから有り得ないとか、あんたがいない間にあたし相当言われてるし。いいよね、美人だから何でも許されて。あたしも柏木さんに生まれたかったわ」
(もういいや、ほっとこう)
あたしが無視して席につこうとしたら、明日香がツカツカと三上さんの所へ歩いて行った。
「景子、もう一度言ってみな」
「何が。何で明日香がキレてんの?」
「ルウコになりたいって?そんな事また言ったら今度はあたしがボッコボコにしてやる!!」
明日香はあたしの事を何でも知ってる。
病気で苦しい事も運動が好きなのに体育に出れない事も。
好きな物をお腹いっぱい食べれない事も。
彼氏にウソをついてこっそり検査に行かなきゃいけない事も・・・。
だから怒るんだ。
「ちょ、ソウ!お前が何とかするべきなんじゃねーの?」
幹太くんが怒りまくってる明日香を止めながら言った。
「うん、そうかもね」とソウちゃんはのんびり言った。