悔しかったから、
あたしはずるいことを言った。
「でも、その子……彼氏いるよ」
事実。うそじゃないけど。
これは達也くんを傷つける真実。
でも達也くんは動じなかった。
「それでも好きなんです!」
──何で。
そこで落ち込んでくれれば、
あたしも少しは楽だったのに。
「……わかった。じゃあ、あなたの名前、先に教えて」
「はい!須藤快(スドウ カイ)、1年です」
初めて知った、彼の名前と学年。
あたしよりもひとつ年下。
こんな形で知りたくなかったけど、
「快くん。頑張ってね」
初めてあなたの名前を呼べて、
本当に嬉しかった。