「おはよう」
あたしが教室に入ると、廊下にまで聞こえていた騒めきはピタリと止んだ。
なんとなく違和感を覚えて、あたしは教室の前で立ち止まる。
「……?」
みんなの視線が、痛いくらいにあたしに注がれているのは……一体何で?
「お、おはよ……」
もう一度挨拶をしてみたけど、誰一人として「おはよう」と返してくれない。
代わりに、みんながひそひそと耳打ちしてるのがわかった。
異様な雰囲気に包まれた教室に、あたしは恐る恐る足を踏み入れ、自分の席に向かう。
その間も、クラスのみんなはあたしを見てはこそこそと何かを話してる。
……何なの、一体?
「何、普通に登校してきてんの」
耳に届いたのは、クラスの女子のそんな言葉だった。
思わず足が止まる。
「え……?」
振り向くと、その子はまっすぐにあたしを睨んでいた。
「よく登校できたよね。裕菜にあんなに酷いこと言ったくせに」