「──…伊沢、雨降ってきた」


鼻先を掠めるじめじめしたようなにおい。
頭にポツリと落ちた雫。


それらは高村くんの言葉を裏付けていた。



「……どうでもいいよ」



濡れるならそれでいい。
そのまま、あたしの心を洗い流してくれるかもしれない。


「ダメだって。風邪ひくぞ」


「高村くんだけ校舎に戻ってて」


「伊沢ほっといて、んなことできるか」


ここを動こうとしないあたしに観念したのか、高村くんはため息をひとつついて、再び座りなおした。



「……あんなに晴れてたのにな」


「あたしが降らした」


「へ?」


「青空見てたらむかつくから、雨降っちゃえって考えてた」


だけど結果はイマイチ。


太陽を隠した雨雲は、あたしの心をそのまま映し出しているみたいで気分が萎える一方。



「高村くん……」



声にならない声で呼び掛けると、高村くんは「ん?」と微笑んであたしに目を向けた。