忘れ物を取ったあたしは、立ち尽くす男子たちを押し退けて、スタスタとドアまで歩く。



「別に他の女子に言ったりしないから、気にしないで。じゃあね。“子供”は早く帰ったほうがいいよ」



思いっきり睨みながら、皮肉たっぷりに言ってやった。


無視するのもよかったけど、どうしても一言言ってやりたかった。



それからあたしは、立ち入り禁止の屋上に行って声をあげて泣いた。


あんな風にまわりに思われていたのがショックだった。


あたしは“伊沢はるひ”じゃなくて、“ひーの引き立て役”としか見られていないことに気付かされてつらかった。


あたしはただの引き立て役。
ひーをさらに可愛く見せるためのおまけでしかないんだ。


どんなに頑張って努力しても、ひーみたいになれない。


絶望と共に、あたしの心に初めて“嫉妬”という感情が生まれた。



この時以来、あたしの心は醜く荒み、そのまま凍り付いてしまったんだ──。