「伊沢っ!!」



あたしを呼ぶ声が聞こえた。


だけど、応える気になんてなれない。


そのまま無視を決めこんでいたけど、目の前に人の気配を感じてあたしは顔をあげた。



「伊沢……ここにいたんだ……」



肩で息をしながら、高村くんは言った。


心配するような目が、あたしに向けられる。
今はその優しさがつらい。


「こんなとこまで、わざわざ探しにきたの……?」


泣き喚いたせいでかすれた声が、あたしの喉から弱々しく漏れた。


「うん。まさか屋上にいるなんて思わなかったよ」


だろうね。ここ、ホントは立ち入り禁止だし。


誰もいない屋上で、ひざを抱えて泣いていたあたしは、きっとすごくみじめで無様だったと思う。



「よかった、見つけられて」



そんなあたしにも、高村くんはまぶしい笑顔を向けてくれた。



「……誰にも見つけてほしくなかったよ。こんなに汚いあたしなんか……」