「あ、おせーよ伊沢」


田代先輩がいなくなってから、あたしは高村くんのもとに向かった。


「うん……ごめん……」


頬を膨らませる高村くんに対して、あたしは俯いたまま応える。


すると、あたしの様子を不審に思ったのか、高村くんはあたしの顔を覗き込んだ。



「伊沢……?どうかした?」



優しい声。温かくて、つい頼ってしまいそうになる。


だけど、高村くんにはもう甘えないって決めたから。



「……何でもないよ」



精一杯笑ってみせた。


「うわ、ホントにいっぱい持ってきたんだね、ダンボール。よし、さっさと運んじゃおっか」


静かな昇降口に、あたしの無駄に明るい声が響く。


「伊沢……」


高村くんが、苦しそうに顔を歪めた。


「高村くん!みんな待ってるし、早く持ってこ!」


笑顔のまま……高村くんのほうを振り返った時だった。



「無理してんじゃねえよ……!」