〈それでさ、お詫びって言っちゃアレだけど、ダンボールいっぱいもらってきたんだ!
で、伊沢。今、俺昇降口にいるんだけど、1人じゃ運びきれないから手伝ってくんない?〉
可愛らしい声で、頼み込む高村くん。
正直めんどくさいけど、高村くん困ってるみたいだし。高村くんにはいろいろ助けてもらってるし。
「うん、わかった。すぐに行くから待ってて」
高村くんの待つ昇降口へと走っていく。
階段を駆け降りて2階まで来たところで、あたしは足を止めた。
「あ……!」
踊り場で誰かと電話している男子生徒を目にすると、あたしは慌てて身を隠した。
た、田代先輩……!
いつものように少し着くずした制服に茶色いさらさらヘア。
腕まくりしている真っ白なYシャツが、少し日焼けした肌によく映えている。
あたしの、憧れの人……。
夏休みに入ってからほとんど会ってなかったから、会えて嬉しい気持ちが溢れて止まらない。
自然と頬がゆるんでしまう。