あたしの気持ちは、まだ田代先輩に向いてるし。


何より、友達を置いてきぼりにしたようなあたしを好きでいてくれるのは申し訳なかった。



「伊沢……あのさ、」


高村くんが真っ赤になりながら、視線を彷徨わせる。



「その……似合ってるよ、水着。すげえ可愛い……。浩也とか、他の男に見せたくないぐらい……」



着てろと言わんばかりに、高村くんが自分のパーカーをあたしに突き出した。


高村くん……。



高村くんを好きになれたら、どれだけ幸せだろうか……。



ふと、そんなずるい考えが頭によぎった。


あたしは、そっと高村くんのパーカーを受け取る。


それをぎゅっと握り締めてから、意を決して口を開いた。



「高村くん……。あたし、最低なことしてきちゃった……」



言わなきゃ。
高村くんに嘘をつくのは、大罪に思えたから。


嫌われても、ちゃんと言わなきゃいけない。