「はぁっ……はぁっ……」
人気のないところまで来ると、高村くんはようやく立ち止まり、息を整える。
あたしも肩で大きく呼吸をして、心臓を落ち着かせた。
「ごめん……伊沢。急に無理やり……大丈夫?」
「う、うん……」
何とか落ち着いたのを見計らってから、高村くんが口を開く。
「あいつらのデート邪魔した俺が言うのもあれだけど、二人きりにさせてあげたくてさ」
相沢くんと香波ちゃんがプールに行くことを知った高村くんは、自分も遊びたいと無理やり二人についていったらしい。
だけど、あたしまで合流しちゃって、やっぱりずっと邪魔し続けるのは忍びなかったみたい。
「優しいね、高村くん」
「いや……本音は、伊沢と二人きりになりたかってのもあるけど」
照れくさそうに頭をかいて、高村くんがつぶやいた。
高村くん……まだあたしのことを想ってくれてるんだな。
嬉しく思うと同時に、胸がチクリと痛んだ。