「た……高村くん……」
あたしの脳裏に、この前のことがフラッシュバックする。
抱きしめられた時の温もりは、今でもはっきりと覚えてる。
「おせーよ、律」
「ごめんごめん。トイレ混んでてさー……っ!?」
相沢くんに答える高村くんの目が、あたしに向けられた。
視線がぶつかり、あたしの顔が熱くなる。
「い、伊沢……?」
「ああ、さっきそこで会ったんだよ」
あたしは慌てて視線を下に落とす。
「そう……なんだ……」
高村くんも頬を紅潮させて、頭をかいている。
「というか、はるひちゃんは誰かと来ていたんですか?こんなところでお一人でしたけど……」
香波ちゃんが話題を変えてくれて、あたしの緊張は少しばかりほぐれた。
それと同時に、ひーのことを思い出させられて不快感が胸を支配する。
「ううん、ひ……」
“ひーと一緒”と言おうとして、あたしは口を閉ざす。
一人と答えれば、香波ちゃんたちはあたしを仲間に入れてくれるかも……。