高村くんに好きになってもらう資格なんて、あたしにはない。
「あ……あたしのほうこそ、ごめんね」
かろうじてそれだけ言うと、あたしは高村くんを押し退けるようにして、教室を出た。
更衣室につくと、あたしはその場に座り込んだ。
あんなことされて、あたしはもう普通に高村くんと接することができるのだろうか。
あんなふうに逃げ出しちゃって、高村くんはあたしと今までどおりに接してくれるのだろうか。
「……高村くん……」
優しくて温かい人。
あたしの汚い部分を受け止めてくれて、あたしの恋まで応援してくれてる。
だからこそ……これ以上傷つけたくない。
高村くんとは、もう関わらないようにしよう。
距離を置いて、高村くんがあたしを嫌いになってくれればいい。
そうすれば、高村くんはもう傷つかなくて済む。
確かに高村くんは、あたしの唯一の心のよりどころだった。
だけど、もう甘えるわけにはいかない。
今まで自分のことで精一杯で、高村くんのことなんて考えてあげられなかった。
だから……せめてもの恩返しとして──。