心臓が早鐘を打って、息苦しい。
男子に抱きしめられたのなんて初めてだから、尚更どうしていいのかわからない。
あたしの場合、無理やり逃げてきちゃったし……。
「あの……伊沢……」
「な、何?」
「さっきは、その……ごめん。急にあんな……」
頭を軽く下げて謝る高村くん。
それを見て、あたしの胸がチクリと痛んだ。
「なんか抑えらんなくなって、伊沢の気持ちも考えないで、つい……。ホント……ごめんな」
切なそうな表情が、さらにあたしの胸を締め付けた。
「ごめん」は、あたしのほう。
あたしは……高村くんの気持ちを利用してる。
「味方だから」と言ってくれた君に、甘えすぎてる。
あたしが頼れば頼るほど高村くんは傷つき、そばにいればいるほど高村くんは苦しい思いをする。
それがわかってるのに、あたしは心のよりどころが欲しいばかりに、君の優しさに甘え、利用してるんだ。