身体全体が、温もりに包まれて、思考回路がストップしてしまう。
「た、かむら……くん……?」
高村くんに抱きしめられていると理解するのに、随分時間がかかってしまった。
同じぐらいだと思ってたけど、高村くんのがあたしより背が高いことに初めて気付く。
大きな手にたくましい腕……。
高村くんも“男”なんだと改めて実感する。
何で抱きしめられているのかはわからないけど、嫌な気はしなかった。
変なの、あたしが好きなのは田代先輩なのに……。
今は高村くんの温もりが、すごく心地よかったんだ。
「ごめん、伊沢……。もうちょっとだけ……このまま……」
「……うん」
拒否も抵抗もしないで、あたしはただ高村くんの温もりに、身を委ねていた。
高村くん……あたしの本当の気持ちを受け止めてくれる人。
あたしの心のよりどころ。
あたしを……好きだと言ってくれた人……。
そこで、あたしはハッと我に返った。