「えっ……」


間の抜けた声が、あたしの口からもれる。


高村くんの射抜くようにまっすぐな瞳が、あたしを捕えて離さない。



「伊沢……気付いてないかもしんないけどお前、充分可愛いから」



心臓が大きく跳ね上がる。


男から“可愛い”なんて……初めて言われた。
いつだって、ちやほやされるのはひーのほうだったから。


嬉しくて……恥ずかしかった。


「お世辞なんて……いらないし」


「そんなんじゃねえよ。もっと自信持てって。俺は、中里よりも伊沢のが可愛いと思ってる」


ひーよりも……あたし……?


信じられない。
あたしがひーに勝てる部分なんて、ひとつもないのに。


高村くん……変だよ。


100人に聞けば、100人がひーのほうが可愛いと答えるに決まってるのに。


高村くんは……なんてバカな人なんだ。



「……ちょっとだけだから」


そうつぶやきながら衣装を受け取ると、高村くんはパッとたちまちいつもの明るい笑顔を浮かべた。