筆箱、取りにきたのかな。
忘れ物とかするんだー。
なんとなく見ていると、視線に気付いたのか、伊沢が嫌そうな顔で振り返る。
「……何」
おぉ、こわっ。
「いやっ……何もないよっ」
慌てて首を横に振り、バッグを肩にかける。
伊沢……なんか怒ってんのかな。
何だか人を寄せ付けようとしない感じが全体的に出てて近寄りがたい。
というか怖い。
変に目をつけられる前に逃げよう!
「じゃあっ……俺はこれで……」
「……」
「……?」
そそくさと帰ろうとしていた足が止まる。
何だ……何で俺を見てるんだ!?
また、あの射ぬくような目で、伊沢が俺を見つめている。
何だろう……。
今この状況を言葉で表すとしたら……。
まさしく“蛇に睨まれた蛙”?