「退院する時、ひー、いっぱいお礼言ってたじゃん?あの時、確かにあの医者に憧れた自分がいたことに気付いた。あたしも、ひーみたいに苦しむ人の力になりたいって思ったんだ」



“病気”という名の、神様が与えた不公平な試練に苦しむ人たちを、ひとりでも多く助けてあげたい。



いや──助けたいの、あたしが。



「大学行く。あたしバカだから、何年後になるかわかんないけど、頑張る……。頑張って、お医者さんになるよ」



だからさ、見守っててくれないかな?
ひーが応援してくれたら、そばにいてくれたら、頑張れそうな気がするんだ。



「──うん。はるなら大丈夫、絶対なれるよ」



根拠なんてきっとないだろう。
それでも彼女は、あたしを信じてくれる。


言葉じゃなく、彼女の目もそう言っていたから。


「私は……特に夢とかないんだよねぇ……」


ひーが遠い目をする。


「一番叶えたかった夢はもう叶っちゃったからなー」


「もう叶ったの?ひーの夢って何だったの?」


あたしが問うと、ひーはいたずらっぽく笑って。



「病気が治って、はるとずっと一緒にいること!」